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2008.02.28

ストロングスタイルバンク

先日、「日経テスト」の模擬試験を受けてきた。
これは、経済知識を基にどれ位使いこなす能力があるのかを測るための「指標」となることを目標に作られ、来年度から実施を予定されているものである。人事担当者向けに開催された模擬受験をやってみたのだ。

謳い文句は「知識量に加えた活用力の測定」だったが、その試験内容からは、どうやって測定しているのかは伺い知ることはできなかった。 そこを質問すると担当者からは「これからその間をつなぐ方法を考える」とのこと。

企業の人事担当者は試験の妥当性や測定基準に悩んでいるはずで、この基準を公共性と客観性の高い経済新聞社に依存したい、というのがテストをドライブすると思われる。当然、論述回答を手間を掛けて評価してくれればコストは高くても納得して貰えるものだと思うのだが、まあ、そこはいろいろあるのだろう。


で、そのテストだが、絶対満点に決まってると思っていたら、二問誤答してしまった。一つはM&Aに関する日米比較、そしてもう一つは欧州中央銀行の金利決定権限の範囲についてであった。

学生時代、国際経済政策部門を専攻していた関係上、EC(今のEU)については石炭鉄鋼同盟、原子力同盟を基点にして、その頃マーストリヒト条約も締結され通貨統合が始まるホットな時期だったこともあり、進行中の事例を学ぶことになり、域内経済の授業でもEC統合(EU)は、実に楽しいテーマであった。

最新のニュースを良く読んでいなかったことがミスの原因でもあるが、あの個性豊かな加盟国の中央銀行業務を強い信念で貫いている欧州中央銀行制度の集権振りに、正解を見て改めて目を開かれる思いであったというのも事実である。

新聞報道によると、欧州中央銀行は9ヶ月連続して金利据え置きの措置を取り続けている。

これは、物価の安定を何よりも重視するという姿勢の表れであり、日米がサブプライム問題で信用収縮で困る「金融機関向け」に金融緩和(金利引き下げ)を行うのとは対蹠的である。日本に至っては、長期のゼロ金利に続く低金利で、その引き下げ幅さえままならないほどの緩和を続けているのとでは、随分と差がある。


第一次世界大戦後、敗戦国ドイツは激しいインフレに悩まされ、この解決を他国侵略に拠って解決しようとしたナチスドイツの台頭を許すことになる。二度の敗戦を経験し、ブンデスバンク(ドイツ中央銀行)は徹底したインフレ対策を採ることを決意する。そして戦後この原則は徹底的に貫かれインフレファイターと綽名された。是非はあるが、まさに経世済民の基本である。

EMSを引き継いだEUはヨーロッパの中央銀行を設立するが、この業務は旧ドイツ中央銀行が受け持った。だから彼等は何としてでもインフレを食い止めようとする行動が遺伝子の中に書き込まれているのだろう。このインフレファイター精神は今も健在である。

金融機関からの緩和の要請、圧力は凄まじいものが容易に想像できる。しかし、次々明るみに出るサブプライム問題関連の損失額や、その影響を受ける金融機関の拡大という巨大なプレッシャーに一歩も引くことなく金利を据え置いている欧州中央銀行のストロングスタイルに、ちょっと泣けてくる。

二度と同じ過ちを繰り返さない、あの時の反省を忘れないために、ストロングスタイルを取り続けるEUBの姿に私達も学びたい。


posted by idr at 16:20

Profile

和田晃一
株式会社エスキューブド
執行役員
1970生まれ
1994NTT入社。附帯事業部門を中心に勤務
2004教育研修会社grownaviを設立。企業研修の企画設計、講師などを務める
2006エスキューブドに参加。コミットしている担当業務は「読書」