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2009.11.16

未来を対話で拓く


今年の11月1日は未来を考える特異日だったのかもしれない。
僕が誘われただけでも、3つの大きな催しがあった。

一つはNPO法人ハロードリーム実行委員会の開催した「夢の日」イベント。これは学習学協会代表理事の本間正人氏からお誘いを受けていたのだが、氏の「夢×本気=実現」というワークショップでは、子供の頃からの夢を初対面の参加者が語り合うなど、未来への大きな夢が、対話となって響く場となったそうである。残念ながらもう一つのイベントに参加することを先約しており、こちらは御辞退申し上げる。

もう一つは、宮様も役員に名を連ねるNPO地球こどもクラブ主催の「河口湖植樹祭」。このイベントに長女と共に一泊二日で参加したのだが、今年で四回目を迎える植樹祭は、10〜15歳の子供に自然の営みを聴・視・触・嗅・味の五感での体験を提供した後、ツツジとサクラを湖畔に植えるというもの。現地の首長や名士の参加する式典の後は、郷土芸能と料理を皆で堪能。春になったらまた来よう、いつまでも美しい自然と文化を残していこう、と無理なく素直に思う。

そして、最も規模が大きかったのはダライ・ラマ法王14世来日記念講演だろう。「地球の未来への対話」と題された講演は、日本を代表する4人の学者との対話を、副題の「仏教と科学の共鳴」のとおり、響かせると謳っていた。因みに4人の学者は清水博、田坂広志、竹村真一、星野克美各先生と絢爛豪華な顔触れ。特に清水先生は3年前の連塾で講演を拝聴して以来、非常に関心を持っていたこともあり参加できないことを心底口惜しく思う。

しかし、このプレイベントとして竹村・星野ペアの対話を聴く機会に恵まれる。問題意識としては共通する二人だが、竹村氏が可能性について希望を述べると、星野氏が現在のパラダイムではそのジャンプができないことを指摘する。そして聴衆の心には、新しいパラダイムが必要であることが、自らの言葉として、実感として、湧き上がってくる。

少し前の話だが、国際科学技術財団が第25回日本国際賞にデニス・メドウス博士を選出し、その授賞記念講演が4月に東京で開かれた。博士の「制約の中に生きることを学ぶ」と題された演目を興味深く聴く。

最近になって漸く地球は脆く壊れやすい環境を纏っていることが理解され、無制限に利己的な活動には抑制が掛かるようになってきたが、これまで多くの人々の認識において地球は広大無辺であり、「豊かな」発展にいくらでも与え続けてくれる存在だったに違いない。

星野先生の論拠はメドウス博士の主張にほぼ沿った内容であり、現在の経済学が説明できる限界を示している。そしてこの先には経済学の論理が教えないシステム思考への入口が、本当は開いている。

システムというのは「部分を合計しても全体にならない何かを含む何か」を持っていることが特徴であり、それは、時計を分解して部品をごちゃっと集めても時間を示す事はできないことでもわかることだが、時計を部品の集まりだと認識しているうちはどうしても「システム」を見ることが出来ない。

また、システム内部にいるとシステムを直接見ることが出来ないという厄介な問題がある。時計の歯車は今何時なのかを知ることは出来ないし、僕の内臓細胞は永久に僕の行為を見ることはない。


僕はこのダライ・ラマ法王と4人の学者の対話で、地球の未来の可能性を探求するパラダイムが対話によって、その「兆し」のようなものでも示されるのではないか?と期待していた。

当日国技館会場で聴いてきた友人、知人、運営スタッフから概要を聴くかぎり、表面的にはそのような対話は観察されなかったようであるが、こればかりはその場にいないと本当のことはわからない。プレイベントの対話だって、表面的には希望竹村VS絶望星野というダイコトミーにしか見えないし、そもそも参加している「自分(達)」を加えてこその場なのである。


11月1日に重なりすぎた「未来を考える」イベントだが、思いがけないところから追体験の可能性が生まれる。


ダライ・ラマ講演に尽力したスタッフと、当日インタビューしたライターのつなぶちようじ氏と、ある宴席で御一緒する。ここで清水博先生との来月行われる会合情報を聞きつけたので早速参加を希望する。実際に対話をした先生はどんな対話だったと仰有るのだろうか?


混乱を制御しようとして一層の混乱を招いている今、未来は対話でしか拓けない。それは、現状を混乱ではなく混沌という「創発」前夜だと見なす視点と、そこに適用される規範はこれから創る、という覚悟を決めることでもある。

posted by idr at 20:10

Profile

和田晃一
株式会社エスキューブド
執行役員
1970生まれ
1994NTT入社。附帯事業部門を中心に勤務
2004教育研修会社grownaviを設立。企業研修の企画設計、講師などを務める
2006エスキューブドに参加。コミットしている担当業務は「読書」